敵対と相利関係を混ぜると不安定化する

Mougi, A. & Kondoh, M. (2014) Instability of a hybrid module of antagonistic and mutualistic interactions. Population Ecology, 56(2): 257-263.

生物群集の維持機構の解明は,生態学の中心課題のひとつです.従来の研究は,この問題に対し,敵対・競争・相利関係などの特定の種間相互作用からなる群集に焦点をあてて研究してきました.しかし,自然生態系では,それら異なる相互作用が混在しており,相互作用多様性の多種共存への役割はよくわかっていません.本研究では,「捕食-被食」と「共生」が混在した単純な群集に注目し,相互作用多様性が群集動態に大きな効果を持ちうることを理論的に示しました.

従来用いられてきた群集の維持機構を理解する方法のひとつは,生物種間相互作用と多種共存を関連付けることにあります.その中心にあったのが食物網研究です.栄養モジュールと呼ばれる単純な食物網の動態の理論的分析から幾つもの共存機構が提唱されてきました.同様にして,競争や共生相互作用の動態も熱心に研究されてきました.これらの研究の共通点は,特定の相互作用のみからなる群集を扱ってきたことにあります.わたしたちは,この制約を取り払い,異なるタイプの相互作用がカップルした「混成群集モジュール」の分析から新たな群集動態のしくみを理解しようと考えました.本研究では,自然界でよくみられる,植物・植食者・送粉者の3種系のような群集を想定した「捕食-被食」と「共生」の異なるタイプの相互作用がカップルした群集を仮定し,相互作用多様性の群集動態への効果を数理モデルにより調べました.

分析から,「捕食-被食」と「共生」が結びつくことで,それらが単独でしめす個体群動態とは全く異なる挙動を示しうることがわかりました(図).興味深いことに,「捕食-被食」と「共生」の個体群動態それぞれが必ず安定平衡に達する場合でも,それらを結びつけると,個体数の永続的なサイクルが生じることを発見しました.この不安定性は,共生関係の捕食者への正の間接効果により生じることもわかりました.また,安定した共存には,いずれかの相互作用が弱い必要があることもわかりました.これらの分析から,従来の特定の相互作用からなる群集の研究は,自然群集の特徴をとらえられていない可能性があることが示唆されます.

 

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