死亡率が推定できない種の衰退をシュート動態モデルで推定する

Ishihama, F., Fujii, S., Yamamoto, K. & Takada, T. (2014) Estimation of dieback process caused by herbivory in an endangered root-sprouting shrub species, Paliurus ramosissimus (Lour.) Poir., using a shoot-dynamics matrix model. Population Ecology, 56(2): 275-288

死亡率は個体群動態を記述するのに欠かせないパラメータであるが,長寿命な木本種やクローン成長する草本種では,個体の死亡が観察される頻度がとても低いため,死亡率の推定が困難である.シュートの更新動態に基づいたモデルは,死亡頻度の低い種の個体群の将来を推定するのに役立つと考えられる.しかし,既存の行列モデルは生理的に統合されたシュートの動態には適用できなかった.我々は生理的に統合されたシュートを持つ植物に適用可能なモデルを開発し,絶滅危惧植物ハマナツメPaliurus ramosissimus (Rhamnaceae)におけるシカ食害の影響と保全対策の効果の推定に適用した.

ハマナツメは萌芽更新を行う長寿命な木本で,樹形は株立ちである.ハマナツメの主要な個体群のうち2つは,シカの食害により深刻な被害を受けており,新しく更新したシュートはほぼ全て食害される.しかし,8年間の調査において個体の死亡は観察されず,死亡率が推定できないため,個体数動態モデルは適用できない.そこで,シュート動態モデルによって,個体の衰弱動態を推定した.その結果,2つの個体群では,それぞれ 37.8年と37.2年という短期間で,個体あたりのシュート数が80 % も減少することが明らかになった.このように急激にシュート数が減少するという推定は,まだ個体の死亡が観察されていないにも関わらず,早急な保全対策が必要であることを示している.

シュート動態モデルを応用した対象種,ハマナツメ(絶滅危惧II類).株立ち型で樹高約4mの低木.

(a) シカによる食害を受ける前の健全なハマナツメ個体群

(b)食害によって下層の葉を失った個体群

(c) 食害を受けた若いシュート

 

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