生葉に潜む内生菌:地理的なパターンと相互作用ネットワーク

 

Ikeda, A., Matsuoka, S., Masuya, H., Mori, A., Hirose, D. & Osono, T. (2014) Comparison of the diversity, composition, and host recurrence of xylariaceous endophytes in subtropical, cool temperate, and subboreal regions in Japan
Population Ecology, 56(2): 289-300.
 

 

見かけ上は健全な葉に,多様な菌類が感染していることが知られています.これらの菌類は内生菌とよばれ,これまで調べられたほぼすべての植物上で見出されてきました.しかしながら,その多様性の実態や多様性にみられるパターン,宿主との関係については不明点が多いのが現状です。

 

本論文では,本邦の樹木葉において主要な内生菌であるクロサイワイタケ科菌類に注目し,その多様性,組成,および宿主との関連性を,沖縄の亜熱帯林,京都の冷温帯林,北海道の針広混交林で比較しました.のべ167種,1805枚の植物葉から610菌株を分離し,それらのリボゾームDNAの塩基配列を決定しました.塩基配列の相動性に基づくクラスタリングで,42の操作的分類群(OTU)に類別されました.沖縄,京都,北海道からはそれぞれ31,13,3の(OTU)が記録されました.また,優占OTUのいくつかは広域分布種と考えられたものの,調査地間でのOTUの重複は少なく,気候帯ごとに特有のOTUの存在が示されました.

 

宿主植物と菌類OTUとの相互作用ネットワークを解析したところ,いずれの調査地でも,ランダムに組み合わせたネットワークに比べて,有意に特殊化したネットワークが形成されていました.沖縄では,植物の科や葉の形質が菌類OTUの組成に影響していたことから,こういった植物側の特性が,相互作用ネットワークの特殊化に寄与している可能性が考えられます.

 

クロサイワタケ科内生菌の培養菌体

 

 

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